本研究は、看護基礎教育における臨地実習中に発生した事故やインシデントの情報をコホート研究の方法を用いて学生個人単位で収集し、発生事例について分析するとともに、マクロ的に発生動向を把握し実習経過日数との関連を分析する方法を検討した。 このために、調査票(個票)の入力方法、テキストファイルとしての実習配置表の構造を定め、累積発生割合を算出するためのSASプログラムを新たに開発した。 記述疫学的な累積発生割合の分析から、実習経過にともない、インシデント・事故が新規発生する様子は一様ではなく、実習開始から1〜2ヶ月に発生のピークが認められること、そして一旦低下した後に、中等度の発生のピークを示すという新たな知見が得られた。 この分析手法は、今回はプログラムを作成して行ったが、実習配置表と事例とを適切に結びつける工夫を、紙を用いたり、スプレッドシートを用いたりして行うことで十分可能であり、看護学校自身で事故等の発生状況をモニタリングし要因分析するための一方法として活用できるものである。 今後、十分な数のデータが蓄積されれば、エラー発生の分析で発展した各種の定量的な解析方法も活用することが可能となり、発生確率のモデル化により実習体制における構造的な要因が推測される等の成果が期待されよう。さらに、収集した事例は、今回は資料として示した。今後の質的な分析が待たれるところであるが、それ自体として事故予防教育の独自教材として意義が非常に大きいと考えられる。
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