本研究は、脳血管障害者と家族介護者の生活の再構築を支援するために、在宅領域で一般化できる看護介入の方法を開発することを目的とする。「起きる」「座る」行為への看護介入の評価に続き、平成16年度は、摂食・嚥下機能霜害をもつ障害者の「食べる」行為の自立にむけた介入プログラム開発とその効果を評価することをねらいとする。 1.摂食・嚥下の看護介入の効果を測定する評価研究の実施 対象は、入院中の脳血管障害を呈する患者で、ロバート・K・インのケース・スタディ法を用いてデータ収集を行った。介入方法は、藤島の摂食・嚥下グレードを基に、摂食・嚥下の能力の他に、高次脳機能障害を含めた評価、アセスメント、アプローチ方法などを勘案し、ステップアップの段階を5段階に分類した。アセスメント項目は、(1)意識レベル(2)バイタルサイン(体温・呼吸・血圧など)(3)呼吸状態(4)検査データ(感染兆候)(5)摂食・嚥下機能(6)歯・口腔機能(7)栄養摂取の方法(8)姿勢・摂食動作・摂食用具(9)間接訓練(10)直接訓練(11)高次脳機能評価(12)本人・家族の意思決定(13)インフォームドコンセント(理解と選択)。また摂食・嚥下に関する看護者の意識を質問紙でデータ収集した。期間は、アプローチ方法のパイロットスタディを含め、平成16年8月〜平成17年2月。5事例のパターン・マッチングの分析結果において、段階的なアセスメントによる摂食・嚥下の機能評価により看護介入の効果を指標化する可能性が示唆された。しかしながら脳血管障害者の後遺症として約半数に認められる高次脳機能障害を合併している事例では、ステップアップのプロセスでパターンの一致度が低下する傾向が認められた。高次脳機能障害を呈する患者の場合は、身体麻痺等の障害とは異なるパターンを示すことを念頭に入れ、高次脳機能障害の評価をあわせて介入方法を綿密に組み立てる必要性が示された。 2.摂食・嚥下の看護介入の効果を在宅ケア領域で確認するための測定用具の検討 1の評価研究の実施と平行して、VFを用いず、摂食・嚥下(特に嚥下機能)を視覚的に評価できる測定用具の開発をさらに検討中である。現在、LittmannのElectronic Stethoscopeによる嚥下音の聴取とデータ解析によりその可能性をリハビリテーション病院と連携して試験中である。
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