研究概要 |
I 目的:本研究の目的は,痴呆性高齢者の終末期ケアプログラム開発に資する基礎資料を得るため,終末期の進行過程を追求することである。 II 研究方法:調査1 新潟県内の某特養に入所し,痴呆の重度期にありかつ経管栄養法を受けている入居者2名の入居以降の心身状態の変化に関する情報収集。調査2 対象は千葉県内の某特別養護老人ホームに2002年8月時点で入所していた103名のうち,痴呆の診断のある29名(男性2名,女性27名)。同施設の既存記録を資料とし,発熱日数,喘鳴,嚥下困難,嘔吐,転倒,徘徊等の周辺症状に関する情報を収集した。 III 結果及び考察:調査1 経口による食事摂取者2名との比較をしたところ,経管栄養法を受けている者も自己抜去などにより発熱や肺炎の予防に必ずしも経管栄養法が功を奏していない実態が示された。調査2 2003年11月末時点で,29名中8名が死亡した。死亡者は男性1名,女性7名,平均年齢82.6±7.63歳,生存者は平均80.3±7.68歳,有意差はない。死亡前1年の時点で死亡者全員が高度以上の認知症,3名が寝たきり,5名が歩行や起居可能であった。そのため,死亡者寝たきりと非寝たきりの2群にわけて経過を比較した。死亡前1年から死亡前半年まで6ヵ月間の発熱日数は,寝たきり者47±22.9日,非寝たきり者18±20.3日であり,有意差はないが寝たきり者に多い傾向であった。この他,寝たきり者全員に「喘鳴」の記載が,2名に「嚥下困難」,1名に「嘔吐」を認めた。一方,非寝たきり者では全員に共通の徴候はないが,3名に俳徊等の「周辺症状」が,2名に「転倒」,1名に「嘔吐」の記載を認めた。更に死亡前6〜3ヵ月をみると,寝たきり者では引き続き「喘鳴」と「嚥下困難」の記載が多く,非寝たきり者では「周辺症状」が再度確認され,新たに3名に「嘔吐」,2名に「転倒」,1名に「喘鳴」の記載を認めた。
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