初年度の研究では、高齢者が「閉じこもり」に至る経過の中で外出頻度が低下することに着目し、外出頻度の低下に関連する要因を検討した。対象は地域参加型機能訓練事業などに参加している虚弱高齢者161名で、質問紙により回答を求めた。その結果高齢者の外出頻度と、「外出サポート」「地域行事への参加」「現在の体調」「生きがい」「役割意識」の関連が示唆された。さらに外出頻度を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果では、外出サポートがないと3.1倍、役割意識が低いと4.5倍のリスクで外出頻度が低下することが明らかになった。 初年度の研究から、高齢者の外出頻度には「生きがい」や「役割意識」といった心理的要因が大きく関与していることが明らかになった。そこで次に地域に居住し、移動能力があるにもかかわらず閉じこもっている高齢者の心理的要因の構造を明らかにすることを目的として検討を行った。質問紙調査によって252名の高齢者から回答を得、閉じこもりの有無には「生活創造志向」「人生達成充足感」「穏やかな高揚感」「外出志向」の4因子が関連していることが明らかになった。またそれぞれの心理的要因と関連のある基本属性、身体的要因、社会的要因についても明らかにした。 さらにこの研究をもとに、「閉じこもり」予防のための保健指導の指針を得るために、外出しようとしないタイプの「閉じこもり」について、閉じこもりに至る要因間の因果関係を、心理的要因を中心にして構造的・機能的に明らかにした。その結果、「閉じこもりの有無」を最終的な従属変数とし、因果モデルの適合度を確認しながら、最終的に高い適合度を持つモデルを作成することができた。
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