研究概要 |
1.文献検討および研究地域の選定 地域における虐待予防を考えていく際に、地域の乳幼児健診以前に把握でき、対象者とかかわりをもてる時期として周産期への対応が注目されてきている。しかし我が国では、周産期そのものに焦点をあてた研究は多いが、その時期を児童虐待予防として捉え、医療医機関と地域の連携を目指した研究はほとんどない。海外文献では、脆弱な家族(vulnerable families)に対する家庭訪問の効果が研究されている(Kearney.M.H.;2000,Duggan.A.;2000,Nardi.D.A.;1999)。また、英国ではヘルスビジターが地域の母子に対して個別的な支援を行っている。そのなかではペアレンティングを中心とした支援がおこなわれている(Malone.Mary;2000)。これらの文献から新たなプログラムを開発するにあたってペアレンティングを中核に考えていくことが必要である。 研究対象地区としては、今まで母子保健計画策定等に加わり、地域の状況や保健師の活動がより理解できているI市、H市、D市を選定しそれらの地域における周産期への活動の実情を把握しているところである。I市では医療機関と連携し、地域での母親への取り組みが行われつつある。そのなかでvulnerable familiesとして位置づけているのは若年で出産した親、精神疾患をもつ親である。H市、D市においてもそれらの対象への支援の状況把握を継続して行っていく予定である。 2.ペアレンティング概念の明確化 文献検討から導き出されたペアレンティングについて、明らかにしていくために、今年度は全国の保健所で実施されているペアレンティングプログラムについての実態調査を行った。対象としている親の問題としては、『明らかな虐待行為』10.7%5,『虐待の疑い・ハイリスク』48.8%、『強度の育児不安』40.5%、『その他の育児問題』17.9%と予防的観点から、虐待の疑いや強度の育児不安を対象にしていることが明らかになった。また、グループの目的としては、『親の成長』、『虐待予防』、『親自らの気づき』、『共感・支え合い』というのが多く、親自身に焦点をあてたプログラムが実施されている。内容では、『自由に話す』73.8%、『テーマを決めて話す』16.7%、『ワークを入れる』11.9%とプログラムを決めていないのが多かった。グループの評価は『している』60.5%、『していない』39.5%であったが、具体的な評価方法はまだ手探りの状態であることが示された。 これらの研究実績を踏まえ、介入のためのペアレンティングプログラムの開発、研究実施地域の調整を行っていく予定である。
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