1.文献検討、および先行研究を参考にし、精神科看護モデルであるオレム-アンダーウッドモデルを基盤として「産後うつ状態にある女性への精神保健看護の介入」モデルを開発した。2.次に上記モデルに基づいて、産後うつ状態にある女性3名に介入し、精神保健看護の介入の機能と効果を質的に検討した。その結果、精神保健看護の介入の機能として、信頼関係の構築を基盤として、精神状態やセルフケアレベルをアセスメントする、支持・承認する、人間関係やサポート状況をともに確認する、心理教育的アドバイスなどが抽出された。また、介入の効果としては、楽になる、安心する、自分の思いに気づく、自信を持つ、新たな目標や生き方を見出す、子どもへの気持ちや接し方が変化するなどが抽出された。得られた結果から、精神保健看護の介入は、産後の女性の精神健康をより高め、また女性のセルフケア能力を高める機能と効果を有するものと考えられた。3.次に、文献検討や先行研究から精神保健看護の介入を評価するための尺度を検討した上で、産後用セルフケア尺度と日本語版産後ソーシャルサポート尺度をあらたに開発することにした。2つの尺度について、専門家による内容妥当性の検討を行い、またパイロットスタディを実施して表面妥当性を検討し、尺度を修正した。これらの尺度については今後も調査を継続して信頼性と妥当性を検証する予定である。4.次に、介入研究の一部としてスクリーニング調査を実施し、産後の女性の精神健康状態について検討した。対象者は、産婦人科または小児科外来に1ヶ月健康診査のために訪れた女性755名である。主な結果;(1)EPDS得点が区分点(8/9点)以上だった者は127名(16.8%)だった。そのうち精神的な問題で治療を受けていると明記した者は4名のみであった、(2)EPDS得点と相関関係にあったのは出産経験と子どもの健康状態であった。以上から、精神面において十分なケア・サポートが受けられていない現状や、なかでも初産婦や子の健康に問題がある産後女性への精神的支援の必要性が示唆された。
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