研究概要 |
研究は,介護老人保健施設を利用する高齢者が,自らのライフストーリーを他者に語ることを通してどのように自己を建て直していくのか,また残された人生にどのように意味づけをしていくのかを明らかにし,高齢者の生涯発達を支援する看護ケアプログラムとしての口述ライフストーリーアプローチの可能性について検討することを目的としている。本年度の研究経過および成果は以下のとおりである。 神戸市内の介護老人保健施設利用者7名(女性4名,男性3名)を対象として,研究者1名との個別面談形式による口述ライフストーリーアプローチを実施した。1回30分から1時間程度の面談を定期的に週1回のペースで行い,合計6回から9回の面談を実施している。7名中1名は死亡のため,1名は体調不良のために面談の中止を余儀なくされ,完全なアプローチ終了者は現在5名である。面談内容については随時逐語録を作成し,データ化をすすめている。17年度にはアプローチ実施事例をさらに蓄積すると同時に,個別的に詳細な語りの分析をすすめる予定である。現在のところ,面談の中での語り手と聴き手の2人の関係性の変化や施設利用中のできごと(家族の変化など)などによって,過去の出来事の意味づけやストーリーの変化がみられるのではないかという中間的な分析をしている。また,17年度には,データがそろい次第,高齢者に対するアプローチ前後の客観的評価(発達課題達成尺度を用いた事前事後テスト)についての分析を行う予定である。
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