研究概要 |
昨年度に施行した調査データの分析に基づいて,今年度は,以下の成果発表を行なった。 第5回日本痴呆ケア学会大会では,「施設で生活する痴呆高齢者の睡眠状態と居場所の照度との関連」のテーマで,施設内で対象が過ごす場の照度の違いが,睡眠状態(夜間睡眠の持続性,日中の睡眠時間,入眠時刻の規則性)に何らかの影響を及ぼしている可能性について述べた。 日本老年看護学会第9回学術集会では,「痴呆高齢者における睡眠状態の観察-アクチグラフと行動的睡眠観察の比較-」について発表した。痴呆高齢者の睡眠状態の特徴をとらえるために,従来から行なわれてきた行動的睡眠観察のあり方についてアクチグラフとの比較から以下のように考察した。(1)短時間で睡眠と覚醒を頻回に繰り返し,アクチグラフにおいて著しく睡眠判別区間が断片化している場合は,行動的睡眠観察ではその状態をとらえることはむずかしいものの,30分ごとに行動的睡眠を観察することで,中途覚醒が頻回な睡眠の特徴をある程度とらえられる可能性があると示唆される。(2)身辺への関心が保たれていたり焦燥感が強い痴呆高齢者では,活動量計を装着する協力を得られないこともあり,このような対象においては30分ごとの行動的睡眠観察が有効であると考える。(3)睡眠中でも,掻破行為や痴呆高齢者にみられる何かをつかもうとするような上肢の動きは,アクチグラフでは覚醒と判別され,身体活動量が低下している場合では,覚醒していてもアクチグラフでは睡眠と判別される可能性がある。今年度成果発表した演題については,随時,投稿準備に入る予定である。 当初,今年度に計画していた試験調査は,実施対象施設の選択と調整に時間を要したため,次年度への持越し課題となった。痴呆高齢者の睡眠・覚醒リズムが回復していく際に,自発性の向上,集中力の向上などの変化が表れることが先行研究で明らかになっていることから,それらの評価方法については次年度も継続して検討する。
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