研究概要 |
昨年度に成果発表した,認知症高齢者の睡眠・覚醒状態を把握するための方法の検討について,睡眠・覚醒観察法の異なる観察間隔における相違,睡眠・覚醒観察法とアクチグラフにおける睡眠・覚醒状態の把握の相違について分析した。対象は,施設療養する中等症から重症の認知症高齢者10人のうち,アクチグラフ装着が継続困難な対象を除いた6人である。方法は,睡眠・覚醒観察法(30分と60分間隔)とアクチグラフによる連続3日間の同時測定を実施し,「一日の総睡眠時間」「夜間睡眠時間」「夜間睡眠率」「夜間中途覚醒回数」について比較分析した。 結果,睡眠・覚醒観察法は,観察間隔よりも短い間隔で中途覚醒が起こる時や,臥床閉眼状態で身体の動きや寝息がない時に睡眠・覚醒の判別を誤る可能性が示された。アクチグラムは不随意な動きや掻く,寝具をまさぐる動きを「覚醒」,身体活動性が著しく低いと「睡眠」と判別しやすい傾向にあった。以上より,認知症高齢者の睡眠・覚醒状熊の把握にあたっては,身体活動性や不随意運動,睡眠の断片化の程度を考慮し測定用具を選択していく必要性が示された。 加えて,睡眠に障害をもつ認知症高齢者が生活する施設の照度の実態を明らかにし,光環境の調整をケアに導入していくことの意義と方向性を検討した。対象は,介護療養型医療施設で生活し睡眠に障害をもつ認知症高齢者6人である。調査した3日間のうち,すべての対象が,昼間であっても照度が1,000lxに満たない場所で12時間以上を過ごしていた。 結果,6人中1人を除いて一度も2,000lxを超えず,2,000lxを超えた1人も2時間以下だった。認知症高齢者が生活する場の光環境を調整するために,建物の立地の特殊性もふまえた構造的な照度特性と,認知症高齢者が実際に受けた照度の総合的なアセスメントが重要であり,生活の場における光を有効活用するために,「屋内採光を活用するための居場所の選択」「移動能力に応じた居場所づくり」「屋外活動の導入」「光を受けるタイミングの意図的な計画」といったケアの方向性が見出された。
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