研究概要 |
1.観測の概要 大洲市にある約10.7haの山林地流域のほぼ中央地点,北西斜面に設営された微気象観測タワーで,以下の観測を実施した. (1)乱流変動法によるフラックス観測:タワーの高度35m地点に,3次元超音波風速計(CSAT3,Campbell),水蒸気濃度・二酸化炭素濃度変動計(OP2,DDG)を設置し,乱流変動(渦相関)法による顕熱・潜熱・CO_2フラックスの測定を行った. (2)ボーエン比熱収支法によるフラックス測定:高度14,19,24,29,34m地点に通風乾湿計を設置して群落内部と上部の気温・湿度分布を測定し,高度群落上部2高度のデータを用いてボーエン比熱収支法で顕熱・潜熱フラックスを測定した. (3)個葉蒸散・光合成観測:携帯型蒸散・光合成測定システム(LI-6400,Li-Cor)を用い,観測タワーに近いスギの個葉蒸散・光合成速度を測定した.測定日時は2004年6月15,23日,8月6,27日,2005年1月28日である. (4)土壌呼吸観測:土壌呼吸測定システム(LI-840S)を用いて2004年8月27日,11月8日に測定した. (5)流域水収支観測:流域末端の集水地点設置で流量を,その近傍の開けた地点で降水量を測定した.なお,9月2日の台風による洪水災害以降,流量測定が欠測している. 2.結果の概要 冬季と夏季の個葉蒸散量・光合成速度を比較した結果,同一放射条件下で気孔コンダクタンス,個葉光合成速度,個葉蒸散量ともに夏季は冬季の2-3倍であり,個葉水利用効率は夏季に1/3-1/2であった.この違いは,植物の環境応答特性の違いよりもむしろ,夏季の高温の影響であった. 測量による樹形解析,伐採による枝長と葉面積の関係の解析等により,観測対象地のLAIは約3であった. 土壌呼吸を測定した結果,従来の広葉樹における報告値の1/10程度であった. 個葉の気孔応答モデル・光合成モデルを構築し,群落内部の多層放射環境モデルに組み込み,LAIの増減に伴う光合成速度の変化をシミュレーションした.その結果,現状のLAI=3に対し,LAI=2で群落光合成が最大になると推定された.
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