研究概要 |
本研究の目的は,大気海洋指標を用いた,アジア太平洋域の降水予測モデルを構築することである.そこで本年は,降水予測モデルの構築へ向けて以下のような研究を行なった. (1)南方振動指数(Southern Oscillation Index)と福岡及び韓国の5観測点における月水量との相互相関解析 全SOI時系列と降水量データとの相関を計算した場合,ピアソン相関・ケンダル相関に関わらず福岡および韓国のどの観測地点においても有意な相関は得られなかったので,SOIをその値の大きさによって分類するカテゴリー分類手法を適用した,この場合,新たにノンパラメトリック手法である非超過確率時系列変換とケンダル相関の組み合わせで用いる手法を提案し適用した.その結果,月降水量に対するSOIの影響の全般的な傾向として,福岡と韓国南岸部ではラニーニャ現象が発生した4ヵ月後に,また韓国の中緯度から高緯度にかけての地域では5ヶ月後に強い影響が表れることを示した. (2)各種大気海洋指標指標と福岡市月降水量との相互相関解析 アジア太平洋域の降水に影響を与えうる気候変動を表す大気海洋指標として,太平洋数十年振動指数(PDOI),北太平洋指数(NPI),北大西洋振動指数(NAOI)を選び,福岡市月降水量との相互相関解析を行った.大気海洋指標をその大きさによって5つのカテゴリーに分類して福岡市月降水量との相互相関解析を行った結果,基準化NPIが-2以下の場合,遅れ時間6ヶ月において,非常に有意な高い負の相関が得られた.これによりNPIが小さくなればなるほど,その6ヶ月後の福岡市降水量は増加する傾向にあることが見出された.また,それ以外の指標に関しては顕著な相関関係は見いだされなかった.
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