研究概要 |
本研究の目的は,大気海洋指標を用いた,アジア太平洋域の降水予測モデルを構築することである.本年度は,降水予測モデルの構築および降雨河川流出予測へ向けて以下のような基礎的な研究を行なった. 1.南方振動と福岡及び韓国における月降水量との相互相関解析 福岡および韓国釜山の月降水量を対象に南方振動指数(SOI)と相関解析を実行した.全時系列を対象にSOIと月降水量との相関を計算した場合には有意な相関は得られなかったので,SOIをその値の大きさによって分類するカテゴリー分類手法を適用した.この場合,新たにノンパラメトリック手法である非超過確率時系列変換とケンダル相関の組み合わせで用いる手法を提案し適用した。その結果,本手法により福岡,釜山において,降水変動パターンは違うものの,月降水量に対するSOIの相関において同じ傾向の有意な相関が得られることを示した. 2.南方振動指数(SOI)と地域降水量との非線形カオス解析 南方振動が地域気候の降水および気温に及ぼす影響を非線形カオス理論の観点から検討を行った.福岡市月降水量および月平均気温をSOIと同じ位相空間上にプロットすることにより,個別の時系列解析で得られる低次元の非線形挙動が,結合的に解析する場合には高次の非線形挙動を示すことを明らかにし,結合的に予測することの困難性を示した. 3.降雨流出予測および河川流況の変動特性 (1)損失機構を考慮した種々の貯留関数法を用い,降雨流出におけるモデルパラメータの数およびパラメータ同定の精度が流出予測精度に及ぼす影響を定量的に評価した. (2)河川流況を把握するための基礎である流況曲線を改良し,何本かの流況曲線を同時に描いてもその差異を特にその高水および低水部で容易に比較できる昇降順対数流況曲線を提案し,その有用性を示した. (3)筑後川を対象に渇水及び水資源開発による河川流況の変動特性を詳細に検討した.
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