本年度は、NGOネットワークの政策形成過程への関与について、主に安全保障と人権問題のグロス・イシューを中心に研究を行った。子どもの人権や平和構築の分野で活動するNGOスタッフ、およびNGOと連携をすすめる国連機関のスタッフに対し、インタビューを実施するとともに、イギリス国際関係学会(BISA)の年次会議に参加し、資料収集を行った。 シングル・イシューごとのトランスナショナル・ネットワークについては、NGOだけでなく、インフォーマルな社会運動体、さらには志を同じくする国家や国際機関とも連携が深まり、より重層的なネットワークが構築されていることが明らかになった。とくに、グローバリゼーションが進展する中において、貿易と人権、安全保障と環境など、イシュー間の結びつきも深まっている。特に、企業の社会的責任を求めるトランスナショナルな運動は、新たな対象領域として考察を行った。また、NGOと社会運動体の融合は、世界社会フォーラムにおいて顕在化していることが明らかになった。 これらの成果を中間報告としてまとめた論稿「市民社会によるグローバルな公共秩序の構築」は、日本国際政治学会編『国際政治』第137号に掲載された。また、2年にわたる研究総括として、"Constructing Global Order : Civil Society and a New Public Sphere"をまとめ、Association of the International Studies (ISA :国際関係学会)主催の第46回年次会議において、成果発表を行った(平成17年3月4日)。さらに、国際協力研究会(代表・功刀達朗国際基督教大学COE客員教授)主催のシンポジウム「安全保障と貧困削減」において、「市民社会組織による企業の社会的責任を求める運動」というテーマで報告発表を行った(平成17年3月24日)。
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