研究概要 |
報告書の概要は以下の通りである。まず第I章で両国の子育て家庭支援の最近の動向を述べた。日本政府は少子化対策として子育て支援施策を開始したが、カナダは乳幼児期の重要性から出発したという違いがある。第II章では2年目に現地調査を実施したカナダのファミリー・リソース・プログラム(FRP)について考察した。カナダでは草の根から出発したNPOが今や政府もその存在を無視できないほどに発展し、地域における支え合いの子育てを担っている。FRP全国協会にみるNPOのネットワーク化と子育て家庭支援の共通原理の制定はFRPの位置付けを明確にした。公的な資金も投入されているが、財政は厳しく、いかに効率的で効果的な事業運営ができるか工夫が求められている。トロント市の保育、幼児教育、子育て支援の統合化の試みファースト・デューティはそのひとつとして興味深い。トロントのペアレント・リソーシズ、農村地域のグレイ郡SEGCO,そしてB.C.州のFRP協会を訪問し、事業内容、財政、地域資源との連携、子育て家庭支援の目標等に関して得られた知見を報告した。第III章では日本のNPOおよび生活協同組合の事例、すなわち山形、新座、北区の子育て支援NPOおよび生協の子育て広場、沖縄の地域社会にみる子育て支援について調査し、考察した。カナダのFRPの特徴は家族の包括的支援をめざしていることであり、ソーシャルワークに軸足を置いている。カナダに比べると、日本のNPOの活動は今のところ狭い意味の子育て支援の域にとどまっている。第IV章では父親支援についてカナダと日本の比較を行った。連邦政府の強力なバックアップのもとで進められるカナダの父親支援には迫力さえ感じられる。企業にとっては負担となるファミリー・フレンドリーな父親支援施策を実行させるにはその意義やメリットについての啓蒙が重要な鍵を握っている。カナダの戦略は日本にも役立つにちがいない。
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