我々は、脂質代謝異常を起こして、ヒトの動脈硬化に近い病変を発症するモデルマウス、アポリポプロテインE欠損マウスより、動脈硬化特異的に発現が亢進する新規遺伝子を同定し、最近、この新規遺伝子のヒトでの遺伝子のクローニングに成功した。この新規遺伝子を血管平滑筋細胞に導入して過剰に発現させると、ミトコンドリアからのチトクロームCの遊離を介してアポトーシスを誘導したが、興味深いことに、その後の研究から、このミトコンドリアからのチトクロームCの遊離には新しいporeが関与することが明らかになった。また、この遺伝子がコードするタンパクが今まで報告されたBH3ドメインを有して、チトクロームCの遊離作用を発揮するタンパクとは異なり、全く新しいファミリーに所属するタンパクであることが明らかになった。臓器発現の解析において、ほとんど全ての臓器に発現することから、基本的なアポトーシス誘導機構に関与する遺伝子であることが推察された。さらに、この遺伝子が酸化ストレスや酸化LDL、さらに、虚血によっても発現が促進されることが明らかになった(in submission)。一方、ヒトにおけるSNPs解析を実施する目的で、現在、いくつかのSNPsを同定した。今後、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患患者における解析を通じて、この新規遺伝子の多型が疾患感受性遺伝子としての臨床的意義を有する可能性を検証する。また、プラークの不安定化の病態において、この遺伝子が関与する可能性について検討する。
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