寿命関連遺伝子clk-1の哺乳動物における生物学的機能についてアポトーシスおよびウルトラディアンリズムの制御に焦点を当て解析した。clk-1欠損マウスは胎生致死であり、致死直前の胎児に中枢神経系を含め全身の細胞にアポトーシスが誘導されている事から、clk-1遺伝子産物は胎生期のアポトーシス回避に必須であると考えられた。そのメカニズムを詳しく検討する為に細胞・器官培養を試みた結果、血清添加により培養可能である事が分かった。clk-1欠損マウスの胎児から分離した細胞では、ミトコンドリア膜電位の低下、ATP産生の減少、チトクロームCの細胞質への放出など、明らかなミトコンドリア機能の低下がみられた。CoQ10の培地への添加によりミトコンドリア膜電位が回復することから、clk-1欠損によるアポトーシスの誘導はCoQ産生の欠如に基づくミトコンドリアの機能低下が原因と考えられた。 一方、clk-1欠損マウスの細胞培養や心臓の器官培養によりclk-1欠損細胞での細胞分裂および心臓の拍動リズムの有意な遅延が観察された。しかしこれらリズムの遅延は培地へのCoQ添加により完全にレスキューされた。 以上の結果からclk-1遺伝子は、ミトコンドリア機能を介して細胞のアポトーシスと生体リズムの制御に深く関与していることが示唆された。
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