1.音楽作品としてのメディアアート、主に映像作品とアートアニメーションを多数分析し、作品論としてまとめた。それらを総括した形での「映像を取り込んだ音楽作品の創作理論構築の試み(課題)」は執筆中である。ただしこれに関しては、断面的にはすでに発表執筆している。音を中心にした映像作品やアートアニメーションの分析研究はこれまであまりなく、音楽・映像の両分野の創作理論構築に大きく寄与すると考えている。 2.音楽作品としてのメディアアートの研究成果を具現化する形で、インタラクティブ・マルチメディア作品とビデオ作品をいくつか制作し、発表した。同時にその作品について、内容面とシステム面からの考察を執筆発表した。それは単なる作品解説ではなく、メディアアートの創作特性とその可能性の一端を明らかにするための論述である。視覚から得られる意味・イメージと、聴覚から得られる意味・イメージとが、相互作用で変容する可能性を実作の紹介を通して明らかにしようとした。 3.「映像を取り込んだ音楽作品の創作理論構築の試み」における創作理論は帰納法によるものであり、アート教育やデザイン教育の現状を考慮すると問題が具体的になる。現在、マルチメディアを用いたアート教育やデザイン教育の研究が必ずしも充分でないことを鑑み、本研究課題の一環としてマルチメディアを用いたアートやデザインのための表現能力育成のための研究も行なった。抽象的な理論ではなく、具体的な課題集およびその実践報告という形を取った論述を行なった。報告資料としても有効であると考えている。 4.本研究課題では東南アジアの伝統芸能との係りでのメディアアートの制作・研究も考慮にいれている。そこで東南アジアの伝統芸能を題材にした音楽系メディアアートの制作発表した。また伝統芸能(特にカンボジアの影絵劇)自体についても、メディアアート的展開を見据えて調査研究している。
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