研究概要 |
本年度は,研究の初年度として以下の二点について成果を得ることができた。 1.沖縄の近代建築形成における主要建築物件のリストアップとデータ作成 今年度は、戦後米軍統治によって普及したコンクリート造公共建築の地元での生産状況について、現存する物件とともに消失した多くのデータを得ることができた。取り分けコンクリート造普及の初期である1950年代の物件については、公民館、ホール、銀行等、現在すでに消失しているものが多いが、当時の関係者や関係各機関での直接インタビューによりオリジナルな研究の一次資料を多数入手することができた。また、現在高齢化している当時の関係者にも建設内容の具体的状況を聞き取ることができた。 当時の建築状況については、建設新聞などの各種出版物から関連記事の収集を行い、現在も継続中である。これら関連資料を基に、関係者へのインタビューでは文字に表れなかった背景をも明確にすることができた点は今年度の大きな成果となった。 2.地域性を表出する主要要素の分析 民間住宅のコンクリート化を促進した主要な要素の一つとしてコンクリートブロックの民間企業での生産が挙げられるが、今年度はその品質保全に関する官民一体の活動過程を解明することができ、その成果の一部は日本建築学会九州支部の研究報告として発表した。報告では、コンクリートブロックの民間での生産は品質の格差を伴い、その結果、住宅の建築様式の形成にも大きな影響を与える結果となった様子が解明された。 本年度の研究を通して、沖縄のコンクリートブロック生産は、地域性表出の分析要素として研究計画であげた、近代意匠の形成、伝統意匠の保持、気候風土への対応、そして生産基盤の解明という4要素に深く関わっており、本研究の主題である地域性表出の重要な役割を果たしていたことが解明された点は本研究の意義を一層高めるものである。
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