研究概要 |
本年度は本研究の最終年度にあたり、これ迄の研究成果に基づいて調査研究を進めると共に、不足部分について補足調査を行うことで全体のまとめを行った。 戦後沖縄の近代建築運動の過程において地域のアイデンティティへの追求は、建築のみならず文芸全般における主要テーマとなっており、加えて当時の地域社会における政治経済までをも含めた幅広い分野が関連している。したがって、多様な複合領域にまたがる文献資料の収集を補足する事により、建築的アイデンティティ形成における様々な関連要素を理解する事ができた。取り分け、琉球政府立博物館の設計過程においては、当時の沖縄占領政策を主導した米国民政府の琉球政府への影響の仕方がその内容を大きく左右し、両政府間の役割の相違点と設計運営の在り方は博物館の評価に大きく影響している。本年度は占領政策の内容について法律関係の文献調査からさらに理解を深め,占領下故の特殊事情による設計変更の過程が解明された。 また、戦後急速に普及したコンクリート技術の定着過程についても、その基盤となる地元技術者の具体的教育内容にまで視野を拡大し、高等教育機関が無かった当時の建設技術知識の修得状況について関係者へのインタビューを主体として各種文献の検索により補足的資料の収集を行った。 以上の補足調査を併せて戦後沖縄の近代建築における地域性の表出について全体像をまとめた。
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