研究課題
1.近年のガバナンス理論についてサーベイを行うなかで、地域の社会、経済開発過程において地方政府が有するガバナンスの積極的役割とマイナス効果について議論を深めた。また、中国における地方政府の特殊性、即ち、一党支配の末端機構であると同時に地域の利害関係を調整する主体であるという二重の機能を、ガバナンスの観点からどのように評価すべきか、も重要な論点であることを確認した。2.ここ四半世紀に及ぶ、中国の市場経済体制への移行期の経済成長において、その速度においても、リードする経済主体においても地域間で大きな差異が生じており、そのことを反映して、地域開発過程における地方政府のガバナンス効果においても多様性がみられることから、幾つかの代表的な地域を類型化して捉える必要があることを認識した。3.独裁者タイブの指導者が権力を持つ地域においては、一方で権力を乱用した不正行為が後を絶たないものの、経済成長が目覚しいことも稀ではない。こうした地域の社会、経済開発過程においては、体制移行期においては地方政府の、地元経済主体に対するガバナンスが有効に機能していたとみられる。今後、市場経済原理の深化に伴う、その有効性の変化が研究課題となる。4.対外経済関係を拡充することにより、市場経済体制への転換が最も進んでいる、広東省深せん市においては、移行開始期には、市当局が地元の企業、個人に市場原理を浸透させるうえで多方面にわたり積極的なリーダーシップを発揮したが、市場経済体制への移行が完了しつつある今日では、部分的に選挙制度を取り入れたり、公務員の公開選抜制を導入し、公共部門として住民に対するサービス提供に徹する「小さな政府」を志向し、企業などの組織、個人との間の新たな関係を模索している。
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