研究概要 |
この調査研究では,物理・応用物理関連学科の学部出身者のキャリアや,物理教育の何がそのキャリアに活かされているかについて卒業生に対するアンケート調査を行い,物理教育の効果を評価し,改革のための指針を提供することをめざしている. 初年度である平成15年度には,まず,予備調査を実施した.日本学術会議物理教育小委員会委員の全面的な協力を得て,全国の7つの国立及び私立大学の物理及び応用物理関連学科と共同で,予備調査を実施した.すなわち,それぞれの学科の学部を平成10年,及び平成元年をはさんで前後1年,に卒業した卒業生達にアンケート用紙を郵送で送付し回収した. 調査結果の概要を以下に要約する. 回答者の現在の業種は,大学(短大,高専を含む)と大学以外の研究機関をあわせて,18.1%に対して,製造業が35.1%,情報・通信10.6%など,産業界が約70%を占め,物理・応用物理関連学科が,米欧と同様に,産業・技術分野への重要な人材供給源になっていることが裏付けられた. 学部時代に学んだ物理系科目で役に立っているのは,(複数回答)卒業研究(40.4%)についで一般物理・物理学概論など(38.3%)が多い.物理以外では,数学(50.0%)と英語(38.3%)の比率が高い. 学部時代に物理を学んだことがどのような点で役にたっているか,と言う設問(複数回答)では,新しい科学や技術の原理を理解し利用できること(44.7%),様々な現象や課題について本質的な要素を抽出しモデル化することができること(38.3%),論理的に考えプレゼンテーションできること(38.3%)データの処理・解析を行うことができること(37.2%)など,論理的な思考力や分析力の育成にかかわる回答が高く,研究・学習した具体的な知識を業務に直接使っていると言う回答(22.3%)を上回っていることが興味深い. 平成16年度には,予備調査結果のより詳細な分析をふまえて本調査を行う.
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