研究概要 |
本研究の目的は数学用マルチメディア教育支援システムのために必要なデータベースを構築することであり,既存の数学教育用e-Learningシステムと比較した場合,データベースを中核とする点に特長がある・初めに試作したシステムe-Mathは,人間教師が予め作成したマルチメディア教材をデータベースに格納し,それを必要に応じて学生に提示するという従来方式のシステムであった.実際にキャンパスで公開し経営数学の授業でも活用したが,ビデオなどが簡単に閲覧できることに特長があった.次のステップとして,動的に数学用教材を自動生成して提示するような教材自動生成システムを開発することにした.これは学生のニーズおよび反応に合わせて動的に内容を変化させ指導してくれるような教育支援システムを構築するためには,そのような自動生成機能が必要であること,また,その生成を効率良く行なうためにはどのようなデータベースが必要であるかを研究する必要を感じたからである.その結果,数学用Web教材自動生成のためには3種類のデータベースが必要であるという結論を得た.それらは(1)数学問題のタイプ別の解法プランのDB,(2)数学コンテンツをプレゼンテーションするためのプレゼンテーション方式のDB,(3)個々の数学問題の定義データのDBである.提案する方式では,個々の数学問題に対してこれらのデータを定義するのではなく,可能な限りタイプ毎にまとめメタデータを使い定義し,具体的なデータはMapleなどの数学ソフトウェアでその場で計算して埋め込む,という方針を採った.生成の過程においてこれらのDBからのデータを用いて教材を自動生成するシステムとして,e-Math Interactive Agentを試作した.この自動生成システムを使って作成した教材は経営数学の授業で活用している.本システム及びその基本となる生成方式の特長は以下の通りである. (1)解法プラン定義とプレゼンテーション方式の定義を分離したことで再利用性を向上させた.またその定義方法を簡単化した. (2)数学問題に関するメタデータを定義し,それを上記の2種類の定義で使えるようにした. (3)数学ソフトウェアMapleを動的に起動することで,システムが必要に応じて方程式を解き具体的数値の値を得られるようにした. (4)必要な数学グラフを表示するため,システムはグラフ表示スクリプトを自動生成し,学生はローカルにそのスクリプトを起動することにより3次元的にグラスを動かしながら見ることを可能とした. (5)Webブラウザに数式を表示するため,数式のイメージ作成システムWebEQを起動することで,数式イメージファイルを自動的に作成できるようにした. (6)仮想キャラクタが音声で解説してくれるように,XSLTスタイルシートに仮想キャラクタが台詞をしゃべる機能をつけた. (7)経済数学用の経済学的セオリーの知識ベースをPrologで構築した.(e-Math Interaction Agentとの接続はこれからの課題のひとつである)
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