研究概要 |
最近のナノテクノロジーの進歩に伴い,材料のサブミクロンスケールの構造を制御することが重要になってきている.棒状や円盤状の剛体微粒子が様々な液晶構造をとることが知られており,本プロジェクトは,形状に異方性をもつ剛体微粒子が形成する構造を材料の構造制御に利用するためのものである.これは,棒状および円盤状の剛体微粒子に関する計算機シミュレーションを基盤とし,高分子の複合材料の研究までも含むものである.本年度は,棒状分子と球状分子の複合系,円盤状分子1成分系,および,棒状分子と円盤状分子の複合系に関する研究において,以下に示す実績を上げた. 平行に並んだ剛体棒状分子に球状の分子を添加した2成分系について,モンテカルロシミュレーションを用いて組成比と密度と圧力の関係を調べた.また,この系における分子の衝突を追跡するモレキュラーダイナミクスシミュレーションによって,スメクチックの層構造が現れる際の棒状分子と球状分子の拡散係数の振る舞いについて調べた.シミュレーションのデータとスケールドパーティクル理論の比較から,この系の状態方程式の近似系を提案することができた. 円盤状分子1成分系の研究においては,シミュレーションのための新たなモデル分子として,剛体被球円盤を提案した.モンテカルロシミュレーションによって密度と構造の関係を調べたところ,柱状の高次の秩序相から,ネマチック液晶を経ずに等方相へ転移する場合が有ることが確認できた. 剛体棒状分子と剛体円盤状分子の2成分系について,対称破りポテンシャルの方法を用いてこの系の相図と構造の特徴について調べた.相図に関しては円盤状分子の異方性と体積が大きいときに,等方相とネマチック相のリエントラント相転移が示されること,また,構造に関しては,2種類のネマチック相の存在は示唆されるが,2軸性のネマチック相は現れないという結果を得た.
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