研究概要 |
生成項を含む保存則に対して現在使用されているスキームは,生成項を含まない方程式に対して高精度となる数値流束を用いているため,1次精度にとどまっている.本研究においては,Toroにより提案されたADER (Arbitrary-Accuracy DErivative Riemann problem)法の考え方を適用することにより,生成項を含む非線形保存則に対する高精度・高安定スキームを開発することを目的とする. 高精度化という観点から,昨年度の研究において,ADER法を生成項(一般形)を含むスカラー非線形保存則へと拡張するに際して,解展開法と直接展開法による構築を示した. 本年度は,更に実用上重要となると思われる直接展開ADER法の諸問題への適用性を調べた結果,線形問題,凸型流束を持つ非線形問題,非凸型流束を持つ非線形問題など,広範囲の性質を持つ問題に対して精度よく安定に衝撃波と膨張波を捕らえることが確認された.このADER法を生成項を持つ非線形連立保存則へ拡張し,流体力学上の問題である浅水波方程式に適用した. 安定性の理論解析に関しては,非線形保存系に対する数値計算で,連続・離散両モデル間の性質の食い違い(非適合性=inconsistency)に注目して研究を進めた.これらは高精度化を行う場合に,解の信頼性を担保するのに重要である. 特に、微少な計算誤差が連続モデルに由来しない離散モデルの性質により不正に増幅されてしまう現象が,線形退化場を含む非線形方程式において生じやすい事が明らかになった.このような方程式は流体力学のみならず連続体を伝播する波動の方程式に共通して現われる一般的なものである. 本現象は生成項の精密な数値計算に直接の影響を及ぼす為,信頼性の解析において重要な結果である.
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