研究概要 |
今年度の実績は以下のとおりである:(1)2000年に発表されたポイントベースレンダリング法であるサーフェル(surfels)を拡張し,連続体と非連続体を統一的に表現する処理系を作成した.拡張サーフェルのプリミティブは,ディスクの法線とテクスチャ以外に,ガウシアン透明度テクスチャ,ディスク半径の情報も持ち合わせるため,旧来のサーフェスレンダリング,ボリュームレンダリング,パーティクルレンダリングのいずれも単一の処理系で描くことが可能になり,複雑な自然現象や科学技術データへの適用可能性を拡大することができた. (2)拡張サーフェルの処理系を,放射性廃棄物の地層処分に伴う多孔物質内のコロイド粒子拡散のシミュレーションデータの可視化に適用した.多孔物質内部の構造体の壁面,地下水の流速,コロイド粒子の密度分布をすべて同一の処理系で描くことに成功し,とくに複雑な形状をもつ多孔物質内部の構造体の壁面は従来法よりも20倍程度の高速化が達成された. (3)拡張サーフェルの処理系を,複雑な様相を呈する自然現象のなかでも最も表現の難しい砕波(breaking wave)の統一的レンダリングにも適用した.2次元鉛直断面の水柱崩壊現象を定性的に模擬できるMPS(Moving Particle Semi-implicit)法のデータを平行補間と飛沫粒子生成の2種類の方法によって疑似3次元化し,拡張サーフェルによってレンダリングを行うことで,うねり,さざなみ,しぶきの基本要素が混在するアニメーションを作成した. (4)以上の研究成果をふまえて,次年度の計画を策定した.この手法に多重解像度機構を導入して,さらに高速化を狙うと同時に,より写実的な描画を目指して,専用の照明モデルの検討を行う.テクスチャプレーンへの最近隣射影を行うことで,GPUを利用して抜本的な効率改善の仕組みも同時に考慮していきたいと考えている.
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