研究課題/領域番号 |
15607014
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
只木 進一 佐賀大学, 学術情報処理センター, 教授 (00202169)
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研究分担者 |
菊池 誠 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (50195210)
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キーワード | 交通流 / 実測データ / シミュレーション / 1 / f揺らぎ / 流量逆転 / 非対称加減速 |
研究概要 |
1990年代以降、交通流現象の物理的モデル化とシミュレーションが、動的相転移やパターン形成などの観点から活発に行われている。これらの研究を通じて、交通流が持つ基本的性質が解明されてきた。しかし一方で、それらの基礎となる実測データの解析はシミュレーションに比べると遅れ気味である。本研究謀題では、主として日本の高速道路で実測されたデータ(流量と速度の時系列)を整理し解析するとともに、シミュレーションとの比較研究を行うことを目的としている。 本研究では、東名道、名神道を中心に、広い範囲の実測データを解析する。その解析を通じて、従来あまり注目されてこなかった現象が明らかになりつつある。第一は、渋滞の後退速度である。東名道や名神道に設置されている約2km間隔の計測器より、渋滞の後退速度を計測することが可能である。その結果、シミュレーションの予想とほぼ同じ20km/hで後退することが明らかになった。また、流量時系列が1/f的揺らぎを持つ可能性が従来指摘されてきたが、それは短い時間領域と非常に長い時間領域に分かれて存在することが明らかになりつつある。 実測データで非常に頻繁に見られる、走行車線と追越車線の流量逆転については、基本となる結合写像型最適速度モデルに車線変更規則を導入することで再現することができる。その際、車両の希望速度のばらつきや追越車線と走行車線での希望速度の差が重要な役割を果たしていることが解明された。 また、通常の最適速度モデルでは、加速と減速が対称的に取り入れられている。加速と減速の非対称性を入れることで、渋滞クラスタ中の密度が上がることが簡単な解析によって明らかになった。またこの過程を通じて、渋滞時に追越車線の密度が走行車線のそれより高くなる原因が解明できる可能性が高まった。
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