研究課題
交通流現象の物理的モデル化とシミュレーションの研究が、動的相転移やパターン形成などの観点から活発に行われている。これらの研究を通じて、交通流が持つ基本的性質が解明されてきた。しかし一方で、それらの基礎となる実測データ解析はシミュレーションに比べると遅れ気味である。本研究課題では、日本の高速道路で実測されたデータ(流量と速度の時系列)を整理し、解析するとともに、シミュレーションとの比較研究を行うことを目的としている。本研究では、東名道を中心に、広い範囲の高速道路の実測データを解析する。その結果、これまであまり明確でなかった現象をきわめて明確に示すことに成功した。従来から、高速道路の流量データが1/f揺らぎを示すことが指摘されてきた。しかし、これまでの研究では数時間程度の短い時間スケールの観測から1/f揺らぎを示すものと、数日の時間スケールで1/f揺らぎを示すものが得られている状況であった。この二つの時間スケールの間には、1日周期の運動が含まれている。また、週単位、月単位の周期的挙動も含まれている可能性がある。つまり、どのような時間スケールに1/f揺らぎが含まれているのかが明確ではなかった。本研究では、DFA(Detrended Fluctuation Analysis)と呼ばれる解析方法を利用した。この方法は、時系列中に含まれる周期的挙動などの傾向(trend)を除いた部分に残る長時間相関を抜き出す方法である。そのために、時系列を短い区間に分割し、その区間中の傾向からのずれが、区間の長さにどのように依存するかを解析することで、長時間相関の性質を得ることができる。われわれは、1年間の流量データから、高速道路の交通流が1/f揺らぎを示すことを明瞭に得ることに成功した。また、この1/f揺らぎが、渋滞の有無などに拠らない一般的な性質であることも明らかにした。
すべて 2006 2005
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Journal of Physical Society of Japan 75・3
ページ: 034002
Traffic and Granular Flow '03 (Springer, Berlin, 2005)
ページ: 59-65
ページ: 45-58