研究課題
基盤研究(C)
本研究においては、非経験的分子軌道法の一つである密度汎関数法(DFT)を、フラビン酵素アシルCoA脱水素酵素(ACD)に適用し、基質-フラビン間の分子軌道相互作用の観点から、フラビン酵素の反応機構の解析を行った。計算機実験は、基質(基質アナログ)-フラビンの単純化モデルによる酵素反応および分光学測定データのシミュレーションの有用性を示した。密度汎関数法によるモデル計算は、ACD・3-チアオクタノイルCoA複合体の結晶構造における基質アナログ-フラビンの分子配置を再現し、電荷移動相互作用が主要な構造安定化機構であることを示した。また、酵素基質アナログ複合体に関するNMR化学シフト、可視紫外吸収および赤外吸収スペクトル対しても、理論計算が十分に実験値を再現されることが確認された。また本研究期間に、酵素活性部位における基質および基質アナログの水素結合形成とその結合状態を、振動分光学により観測する方法論の開発を行った。酵素-基質(基質アナログ)複合体の振動スペクトルから特定の振動モードを選択的に観測する赤外差スペクトル測定である。特に、ターゲットとなる原子位置を安定同位体13C、15N、18O等で標識することで、目的の振動モードを選択的に観測する本研究手法は、酵素分野に留まらず、相互作用解析の一般的手法として、応用展開されることが大いに期待される。本課題における上記研究成果は、2005年4月開催のフラビン国際会議にて発表を行い、同分野の研究者に高い評価を得た。
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