研究概要 |
1変数の解析関数の定積分に対して二重指数関数型変換が最適な結果を与えることはすでに良く知られており,とくに端点に特異性のある解析関数の有限区間の積分や減衰の遅い関数の半無限区間の積分にはこの変換は実用上の観点からもきわめて効率の高い方法になっている.それに対して本研究の目的は,1変数の解析関数の不定積分に対して二重指数関数型公式を導くことにある.被積分関数は積分区間の内部に特異性がなければ端点に特異性をもっていてもかまわない.われわれは今年度の研究において,不定積分自体に二重指数関数型変換を適用し,変換後の被積分関数をsinc近似することによって効率の高い新しい方法を導くことに成功した.その成果はすでに学会などにおいて口頭発表するとともに,日本応用数理学会論文誌とJ.Comput.Appl.Math.に発表した.また,われわれはこの公式を2次元累次積分に応用して新しい公式を提案した.この公式は,とくに被積分関数が1変数関数の積からなる場合には極めて効率の高いものになっている.この結果もすでに日本応用数理学会論文誌に発表した.さらにわれわれは,不定積分を計算する近似公式をVolterra型積分方程式の数値近似解法に適用し,新しい効率の高い方法を導いた.併せて,従来の定積分に対する二重指数関数型公式を利用してFredholm型積分方程式に対するやはり効率の高い数値近似解法を得た.これら積分方程式に対する数値解法の成果は論文にまとめ,現在国際誌に投稿中である.さらに来年度以降は,この方法を非線形連立の積分方程式に拡張する研究を続ける予定である.
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