研究概要 |
化学センサーは目的化合物を前処理なしに簡便に検出,定量できる分析法として急速に重要性が増している.しかし,目的化合物の結合部位の設計が難しい有機分子を対象としたセンサーの開発は非常に限られているのが現状である.これを踏まえ,多成分の有機分子を一挙にセンシングできるセンサーチップを開発するのが本研究の目的である. 昨年度までの研究で基質をガラス表面に結合する条件は確立できたが,蛍光発色団であるピレニル基は励起光に対する安定性が悪いことが明らかとなった. 今年度はまず蛍光発色団をダンシル基に変えて実験を行った.その結果,ダンシル基を蛍光発色団とした基質はガラス表面上でも蛍光強度が強く,励起光に対しても安定であることがわかった.次に蛍光発色団をダンシル基に固定し,手始めとしてガラス表面上で金属イオンを認識するセンサーを目指した.ナトリウムイオンの基質結合部位としてアミノエチル酢酸アミドユニットをもち,その先にダンシル基とその蛍光を消光するニトロフェニル基をもつカリックスアレーン誘導体を,既知のジベンジルカリックスアレーンから13段階で合成した.ガラス表面にこの基質を結合させる前に,液相でナトリウムトリフラートの添加でスペクトルがどう変化するか調べた.しかし結果は予期に反してナトリウムイオンを添加しても蛍光スペクトルがほとんど変化しなかった.イオンのセンシングが成功しなかった理由はダンシル基-ニトロフェニル基のペアに問題があると考えられる.今後は適切な消光剤を探るべく,種々の置換基を導入した誘導体を合成していく予定である.
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