研究概要 |
造血幹細胞は自己保存能と多分化能を併せ持つ細胞であり、移植することにより宿主の造血系を長期間にわたって再構築する能力を持つ。組織幹細胞としては最も詳細にその性格が明らかにされており、他の組織幹細胞研究のモデルを提供してきた。マウスにおいては1996年に造血幹細胞が同定され(Science 273,242,1996)、1個のLin-Sea-1^+c-kit^+CD34-細胞により宿主の長期造血系再構築が可能である。ヒト造血幹細胞は免疫不全マウスやヒツジ胎仔を利用した異種移植系の開発により解析が進んだが、未だ単一細胞レベルでの同定は行われていない。われわれは最近NOD/SCIDマウスの骨髄内にヒト細胞を直接移植する技術を開発し、従来より15倍の感度でヒト幹細胞を検出することを可能にした。(投稿中)本研究ではこの技術を利用して研究費交付期間内にヒト造血幹細胞を単一細胞レベルで同定し、マウスと同様に1個の細胞で個体の造血再構築を行うことを目的とする。具体的には平成15年度にマウス骨髄内に造血支持能力の高い骨髄ストローマ細胞を直接移入し骨髄環境を改変する技術を開発する。2003年度は以下の成果を得た。 1ヒト単一細胞のマウス骨髄内移植法の開発 個体内でヒト単一細胞を測定するためには効率の良い移植法の開発が必須である。免疫不全マウス骨髄内へ直接ヒト造血幹細胞を移植することにより効率よく移植可能であることを報告した(Blood 101,2905-2913,2003)。また従来のNOD/SCIDマウスよりさらにヒト細胞を受容しやすいNOGマウスを開発して、造血幹細胞の分化能を検討した(Exp Hematol.31,789-797,2003)。 2マウス骨髄環境の改変 骨髄内移植法を利用してマウス間葉系幹細胞がG-CSFにより骨髄より末梢へ動員され、心筋梗塞後の心筋再生に関与することを示した(論文投稿中)。
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