研究概要 |
本研究の目的は、免疫抑制剤MTX(メトトレキセート)投与中の自己免疫疾患患者に発生するリンパ増殖性疾患(MTX-related lymphoproliferative disorders (LPD))の本邦における発症状況を全国規模で調査し、統計学的、臨床病理学的に解析し、MTXがLPDの発症要因であるかどうか解明することである。 1)MTX(メトトレキセート)関連リンパ球増殖性疾患(LPD)の本邦における臨床病理学的な特徴を明らかにした。 MTXの投与を受けたリウマチ患者に発生したリンパ球増殖性疾患(LPD)を臨床病理学的に検討した。その結果、MTX-LPDの発生要因は大部分原疾患の免疫学的機序の異常により、残りの約1割がMTXの投与が要因であると考えられた(投稿準備中)。 2)自己免疫疾患に罹患している患者に発生したリンパ増殖性疾患53例について、臨床病理学的に解析した結果、リウマチ患者は他の自己免疫疾患患者に比べ、発生したLPDが若干異なる特徴を持つことが判明した。また、polymorphousな形態を示すB細胞性LPDやホジキン病、T細胞性LPDは高率にEBV陽性で、これらLPDでは腫瘍発生にEBVが関与することが示唆される(Int J Cancer,103;443-449,2004)。 3)各種自己免疫疾患患者(RA,SLE,DM,PSS,AIHA)(大部分MTX非投与)に発生したリンパ球増殖性疾患(LPD)41例についてPCR-SSCP法とダイレクトシークエンス法を行いp53,c-kit遺伝子等の変異の分子生物学的解析を加えた。自己免疫性疾患患者に発生したT細胞性LPDでは従来報告されてきた臓器移植後に発生するLPD同様、p53 geneの点突然変異が高頻度に見られた。自己免疫性疾患患者に発生したLPDではp53 geneの点突然変異がある症例はない症例に比べ予後が不良であり、p53 geneの点突然変異と予後と相関することを明らかにした(投稿準備中)。 4)RA患者に発生したリンパ球増殖性疾患(LPD)40例についてCD40発現の臨床的意義について検討した。RA患者に発生したLPDではCD40の発現を認める症例は認めない症例に比べ予後がよく、CD40発現と予後が相関することを分かった(投稿準備中)。その機序については今後の検討課題である。
|