研究概要 |
平成15年度は,集積回路工学および計算機科学の2つの観点からの研究を並行して行った. 1.平成15年度は,人工触媒素子そのものを集積化されたマイクロ電極デバイスによって実現することを検討した.まず可逆なレドックス分子(キノン/ヒドロキノン等)を情報担体として,その生成・消滅をチップ上に集積化された多数のマイクロ電極デバイス(Pt)で制御することにより,目的に応じた反応拡散場をチップ上の微量溶液中に人工的に形成できることを実験的に検証した.すでに人工触媒素子の1次元/2次元配列の基礎実験などを完了しており,平成15年度はこの結果を発展させ,64個程度の人工触媒素子を2次元配列状に集積化した人工触媒素子チップを試作し,それぞれの素子を外部からプログラム制御するインターフェースを実装した. 2.人工触媒素子による無配線集積回路は,物質濃度の時空間パターンに情報をコーディングするとともに,反応拡散ダイナミクスのパターン形成能力を利用することによって,ある種の問題を超並列的に解くことが可能である.しかし,このような分子のダイナミクスを利用したアルゴリズムの系統的な設計法や計算能力は明らかになっていない.そこで,反応拡散ダイナミクスをテクスチャ生成や画像復元のための多次元フィルタとして利用することに焦点をしぼった検討を行った.本研究代表者は,すでにこのような理論展開のために「ディジタル反応拡散システム(DRDS)」と呼ぶ枠組みを提案している.DRDSを用い,(i)生物系テクスチャ画像の生成,(ii)指紋画像の復元,(iii)2次元経路探索,(iv)ボロノイ図生成などのアルゴリズムを検討した.
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