印刷物からの種々の知覚的リアリティの創出を研究課題としており、平成16年後は、主に動きの知覚に関して、大きな成果があった。印刷物は静止画像しか表示できないが、色素のある等輝度パタンが、サッカードによって動きが知覚される現象を発見した。知覚実験により、色定義パタンはその輝度差が±30%以内の場合に、サッカードと逆方向に動いて見えることがわかった。やや薄暗い環境、周辺視野による観察で動きの印象が強調された。等輝度パタンの見えは、一般にリーブマン効果として知られているが、サッカード中は等輝度時に最も良く動きが知覚されるこの現象は見過ごされていた。これらの結果は国際学会(Asian Conference on Vision)において発表済みで、現在論文を作成中である。また、静止画から動きが知覚される現象としては、周辺ドリフト錯視が知られている。この現象に関しては、これまでわずかな定性的研究があるのみだったが、今回、定量的な測定が可能であることを明らかにし、実際に周辺ドリフト錯視を起こす2つの輝度プロファイルに対して実験を行った。その結果、要素が輝度の順に並べられた従来のパタンよりも、白、明灰色、黒、暗灰色の順に並ぶ北岡・芦田バージョンの方が、動きの知覚の持続時間が長く、知覚的動きの方向も容易に制御可能であることがわかった。これらの結果は平成17年度に、国際学会で発表予定である。印刷物の明度コントラスト拡大による発光の知覚や色コントラスト拡大による画像の印象の変化など、昨年に引き続き研究を行っており、平成17年度には総合的な画像の主観評価を交えて成果をまとめる予定である。
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