本研究では、「語感(ある「言葉」が人に与えるイメージやニュアンス)が情報伝達(コミュニケーション)に及ぼす影響修辞的影響を計算機によって計算する語感の認知モデルの構築を目指している。 本年度は、基本語感辞書の作成に重点を置いて研究、調査を行なった。基本語感辞書では、語に対するイメージを、肯定的イメージ、否定的イメージ、どちらとも言えない中間的なイメージという大きく3段階で表すものとし、現在までに、形容詞(形容動詞も含む)約13600語、動詞約5400語(だだし、形容詞、動詞ともに表記や送り仮名の違う同一の語を含む)について検討した。具体的には、肯定、否定のどちらかに属すイメージの尺度として、「喜」「好」「期待」「悲」「嫌」「驚」「恐」「怒」を設定し、一語一語について検討することで進めた。この尺度ではどのイメージにも決められないものが中間的なイメージを持つ語ということとしている。 形容詞は、IPAL基本形容詞辞書の見出し語と、先行研究において感性を表わす語としてリストアップされている語を加えて対象を選択した。 動詞は、毎日新聞の2000年版の記事から「事件、事故」に関する約15000記事中で頻出の動詞3800と、それ以外のIPAL基本動詞辞書の見出し語を加えて対象とした。 また、名詞についても最初のデータとして同新聞の事件、事故記事中の頻出名詞データを用いて約1800語の検討を行なった。ただし、記事の性質上、「逮捕」「犯罪」などの否定的な名詞が多かった。名詞は、名詞単独では語感を決め難いものが多いため、コーパスを用いて目的の名詞の周辺に現われる語の語感を基に名詞の語感を決定する方法を検討している。コーパスとしては比較的手に入りやすい新聞記事と、WWWの様々なページを直接利用する方法を見当し、プログラムの作成にあたっている。
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