研究概要 |
本研究では,近未来のナノデバイスを想定した大規模集積回路(ナノブレイン)による新しい知能情報処理機能の創出を目指す.本年度は次の3つの研究項目について研究を実施し,(i)ナノブレインの基本デザインに関する検討,(ii)ナノブレインの成長・学習・適応・進化に関する検討・仮想実験および計算機実験を遂行した. (1)任意結合型神経回路網(FCN)による情報処理:情報処理素子間を任意に結合した構造の回路網を処理目的に応じて進化的に最適化する方法論を確立した.また,提案モデルを迷路内最短経路算出問題,エージェントの行動最適化問題などに適用してその有効性を計算機実験により検証した.これより,単一の機能を有する情報処理素子を集積化した構造によって複雑な情報処理を実現するナノブレインの基本設計に対して有益な知見を得た. (2)アルゴリズム・オートマトンの進化的最適化法の開発:構造を最適化する手法として知られている遺伝的プログラミング(GP)を改良することで,従来のGPでは実現できなかったプログラム・アルゴリズムを進化的に最適化することができるAGPA(適応型GPオートマトン),およびオートマトンを自動構築することができる遺伝的オートマトンGAUGEを開発し,その有効性を計算機実験により確認した (3)セル型構造によるエネルギー最小化:単純な素子を空間的に集積したいわゆる"セル型構造"を用いてエネルギー最小化を行う新しい手法を開発し,例題としてタンパク質の3次元構造推定問題に適用した.その結果,従来は膨大な計算時間を要していた問題を,パーソナルコンピュータを用いて計算することができる画期的な計算モデルを確立した.この成果はハードウェア化し易い構造をもったナノブレインの設計に非常に有効である.
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