研究概要 |
本研究では、「人間の連想にはどのようなタイプがあり、それらは機械的にどのように実現可能か」ということを明らかにすることを目標としている。 本年度は、当初の予定を変更して、4択クイズを題材に、これを連想問題として解くことに取り組んだ。ここで対象とした4択クイズとは、次のような問題である。 Q:映画「アメリカン・グラフィティ」の監督は誰? A:ジョージ・ルーカス B:スティーブン・スピルバーグ C:フランシス・フォード・コッポラ D:黒澤明 このような4択クイズを連想問題として解くとは、「アメリカン・グラフィティ」から最も強く連想される選択肢を4択の中から選ぶというという方法である。これを実現するためには、(1)問題文から連想の出発点となるキーワードを取り出すことと、(2)そうして取り出されたキーワードと選択肢との連想の強さを測ることが必要となる。 後者の連想の強度を測るために、本研究では、サーチエンジンのヒット数を用いる。前向き連想は、キーワード(K)から選択肢の一つ(T)を連想する強さであり、fa(K,T)=hits(K and T)/hits(K)により計算する。一方、後向き連想は、選択肢の一つ(T)からキーワードを連想する強さであり、ba(T,K)=hits(K and T)/hits(T)による計算する。この2つの指標で1位となる選択肢が等しい場合、その選択肢が正解である可能性が非常に高い。2つの指標の1位が一致しない場合は、どちらの指標がより信頼できるかを判定して、解を決定する。 問題文からのキーワードの抽出においても、連想の強さの指標が利用できる。すなわち、より強い連想を示すようなキーワードをよいキーワードとみなすという方法である。 このような方法を実装し、実験したところ、4択問題の約70%を、正しく解くことができた。提案手法で解ける連想は、「primary association(最も強い連想)」と呼ぶべき・タイプの連想であり、たとえば、映画であれば、監督を連想するというタイプである。質問応答の答えの大半が、問題文中の重要なキーワードとこのようなタイプの連想関係にあるということは予想外の発見であり、非常に大きな知見である。また、このようなタイプの連想は、サーチエンジン(ウェブ)を用いて、実現できることがわかった。
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