研究課題/領域番号 |
15650033
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
津田 一郎 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10207384)
|
研究分担者 |
藤井 宏 京都産業大学, 工学部, 教授 (90065839)
行木 孝夫 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40271712)
|
キーワード | I^*ニューロンモデル / ギャップジャンクション結合 / カオス的遍歴 / 同期・非同期転移 / ソフトコンピューティング / 動的細胞集成体 |
研究概要 |
高等哺乳動物の大脳新皮質においてI類ニューロン同士のギャップジャンクション結合が豊富に存在するという観測事実に基づき、数学モデルを構築し、時々刻々変化する細胞集成体の動特性を研究した。I類ニューロンを数学的に特徴付けるとその本質的な構造が抜き出される。それは次の三性質にまとめられる。1.分岐パラメーターが分岐点に達するときに無限大の周期を有するようなリミットサイクル振動の存在、2.二つのヌルクライン間に狭いチャンネルが現れること、3.ホップ分岐が共存し、その不動点は1のリミットサイクルの内部に存在すること。これらの性質を持つモデルニューロンをI^*ニューロンと呼ぶ。これがI類ニューロンのサブクラスを形成する。ギャップジャンクション結合のモデルは拡散型を選び、境界条件は偏微分方程式との接続性からノイマン条件とした。つまり、結合振動子系の端ではオープンにしている。この系をさまざまなシステムサイズに対して、また外部電流、非線形性、結合強度をパラメーターとして数値解を求めた。その結果、この系は非常に興味深い構造を有することが分かった。二つのパラメーターを固定し、例えば結合強度を変えていくと、全同期状態の周期振動状態から発達した乱流状態に至るが、その途中で、種々のスケールを持つメタクロナール波の出現による遍歴現象、同期・非同期のカオス的スウィッチ現象などが典型的に見られる。特に後者についてはその構造を詳しく解析した。その結果、クライシスやブローアウト分岐が見られ、3種のメタクロナール波と完全同期解の組み合わせからなる状態が新しい状態になり、それが不安定化してアトラクター痕跡となることで、カオス的遍歴状態に至ることが判明した。この事実は、種々の外部入力に対するシステムの動的な応答の典型を示すものであり、ソフトコンピューティングの基礎を与えるものである。
|