研究概要 |
まず光賦活に対するアルファ波挙動の基礎的性質を明らかにするために、従来の10チャンネル脳波計を20チャンネルに拡張するとともに光賦活の位相を制御する装置を新規に構築した。これを用いて、摂動光に引き込まれた脳波の位相分布を大脳皮質全体にわたって調べたところ、後頭部(O1)では同位相になり、頭頂部に向かって連続的に位相がずれ、前頭部(Fp1)では逆位相になった。また引き込みの強さは皮質上の部位と摂動光振幅に強く依存することがわかった。さらに、視覚野における確率共鳴を明らかにするために、周期摂動光と雑音光を左右の眼に分離して印加し確率共鳴を起こさせると、引き込みは第1次視覚野の活動を反映する部位O1,O2で最も強く、これらから離れた部位では急激に低下した。このことは視覚刺激に伴う確率共鳴は第1視覚野で起こることを意味する。 また、確率共鳴によるアルファ波引き込みの空間分布を定量化するために、我々が先に開発した周波数-空間相関法を用いて、摂動光の強度と位相、および雑音光強度に対して解析した。その結果、摂動光のみを印加する場合には、引き込みのピークが相図の特定部位に局在することが分かったが、雑音光が存在する場合には明瞭な分布特性は得られない。これは単峰性の脳波を示す被検者のみを対象としたためと考えられ、様々なタイプの脳波を示す被検者を集めデータを集積する必要がある。最後に、引き込みの過渡現象を高い時間分解能で計測するために、ウェーブレット解析を行うソフトウェアを開発した。これを用いて、脳波の応答時間が雑音光強度に依存して短縮することを見い出した。この現象と確率共鳴ならびに認識との関係については今後行う予定である。
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