本研究の目的は、香りの高速な切り替えが可能な仮想空間構築用香り発生装置を試作すること、および、その応用として、香りと言語などのメディア変換法、映像や音楽に香りを付けコンテンツの付加価値を向上させる手法などを検討することである。本年度は、最終年度であり、香り発生装置プロトタイプの製作、および、香り付加の効果を検証するため様々な心理物理実験を行った。 1.香り発生装置の検討 (1)マルチメディア対応香り発生装置;小型で、複数の香りを調合して放出できる空気砲式香り発生装置を試作した。6種類の香りを1%の精度で調合し、利用者の顔に向けて放出できる。また、マルチメディアと連動させ、嗅覚特性を向上する方法について検討した。特許、論文を準備中である。 (2)香り切り替え装置の小型化の検討;マルチメディア、VR対応の香り発生装置では、香り切り替え部分の機構が重要な課題である。小型で簡易な香料蓄積装置を用いて、高速に香りを切り替える実験を行った。数秒で香りを切り替えることができる。 2.香りの感性評価 (3)香り付き映像コンテンツ;昨年度に続き、映画に香りを付ける方法について検討し、効率のよい香り提示方法を提案した。また、瞳孔反射と視線検出と組み合わせて臨場感を客観的に評価する方法を検討し、映画の中で、適切に香りを付けると、臨場感、内容理解が深まることを明らかにした。また、匂い付き映像において、臨場感向上因子を明らかにするために、SD法による主観評価実験を行った。香りと映像の関連、提示タイミングが重要なことを明らかにした。 (4)地理情報記憶支援;広いVR地理空間での作業において、視覚、聴覚、嗅覚、触覚提示の組み合わせを様々に変え、香り提示が記憶支援にどの程度効果があるのかについて検討した。VRで生成した町並みを歩行するシミュレーション実験によって、香りをつけることで建物名、建物の位置が記憶に定着されやすいことを明らかにした。また、建物に合致した香りをつけた方がその効果が高い知見を得た。 (5)香り付きホームページ;遠隔から香りレシピを伝送し、端末で香りを合成し、提示するソフトウエアを作成した。これを用いて、香り教育への応用システムを検討した。 (6)香りと味の連携実験;香りを提示することによって、味覚にどのような影響があるのかについて予備実験を行った。嗜好飲料を用いた実験で、香り提示の効果が明らかになった。応用を検討中である。
|