研究課題
痛みのメタファー研究は、『心理学研究』に投稿した。痛みの演劇的研究は、日本語と英語の両方の論文にまとめた(投稿準備中)。後者の内容は以下の通りである。研究目的:個人の最も主観的な体験であり他者に正確な伝達を行うことが困難とされる痛み(pain)をとりあげ、素人には難しいとされている「痛み」の演技について、舞台俳優としての演技経験年数の異なる初心者群、中間群、準熟達者群を比較し、演技経験を積むにつれ「痛み」の演技がどのように変化していくかを検討した。仮説:初心者群よりも経験の長い中間群、さらに準熟達者群のほうが、見る側に伝わりやすい演技をするであろう。場面間の比較では、より複雑な「痛いふり」場面と「痛くないふり」場面の方が、「痛くない」場面や「痛い」場面よりも見る側に伝わりにくいであろう。方法:(1)高校卒業後の演劇経験年数1年未満の初心者群12名、1〜5年未満の中間群12名、5年以上の準熟達者群12名、計36名(各群男女各6名ずつ)を対象に、本当に痛くないので「痛くないよ」と言う場面、本当に痛いので「痛いよ」と言う場面、本当は痛くないが痛いふりをして「痛いよ」と言う場面、本当は痛いが痛くないふりをして「痛くないよ」と言う場面の4場面を設定した(順序はカウンターバランス)。演技者は、1場面につき「1分間練習-演技」を3回繰り返し、終了後ビデオをモニターで見て3回のうち一番出来がよいと思うものを選んだ。(2)一般大学生・大学院生46名(男性20名、女性26名)を対象に、上記の36名の演技者×4場面=144のビデオ映像について「ふり」か「演技」か等の評定実験を行った。結果:場面にかかわらず、熟達と共に演技が伝わりやすくなるということはなく、むしろ初心者の演技の方がわかりやすかった。準熟達者群は、見る側に伝わりやすい演技をするのではなくより自然な演技をすること、及び複雑な場面となっても自然さが落ちないことに技能の熟達が示された。
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作業療法ジャーナル 39
ページ: 880-885
京都大学大学院教育学研究科紀要 50
ページ: 1-17
京都大学高等教育研究, 10
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名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要 52
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