超高解像度2次元電気泳動法を用いた神経極性形成タンパク質のネットワーク解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15650058
• 研究機関: 奈良先端科学技術大学院大学
• 研究代表者: 稲垣 直之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (20223216)
• キーワード: プロテオーム / 2次元電気泳動法 / 質量分析法 / ゲル内消化法 / ALS / 神経細胞 / 細胞内ネットワーク / 細胞極性

研究概要

本研究の目的は、我々が独自に開発した高解像度2次元電気泳動法を利用したプロテオミクスの手法を用いて神経細胞の極性形成に関わる分子群を網羅的に同定し、それらの機能解析を行うことにより、神経極性形成・維持の細胞内分子ネットワークを明らかとすることである。
神経極性形成分子群の網羅的検出のために、本研究ではまず、二次元電気泳動法のさらなる高感度化をおこなった。確立した二次元電気泳動法はタンパク質分離の解像度を上げるために93cmx103cmの巨大ゲルを用い、タンパク質の検出感度と定量性を上げるために[^<35>S]によるオートラジオグラフィーを使用した。このシステムは知る限り世界最高の検出感度とダイナミックレンジを持っており(1-10^5)、1万個以上の蛋白質スポットを検出することが可能となった(Curr.Proteomics 2004)。また、質量分析法による高感度タンパク質同定のための界面活性剤ALSを用いた消化法を確立した(J.Mass Spectrometry 2004)。以上により、本研究での高感度のプロテオミクスを用いた神経極性形成分子群の解析が可能となった。
そこで次に、これらの高感度2次元電気泳動法と質量全析法を用いてラット培養海馬神経細胞より、82個の神経軸索に濃縮するタンパク質群と92個の神経極性形成に伴って発現上昇するタンパク質群を同定した。同定された分子にはタンパク質合成・分解関連分子、細胞骨格・細胞接着関連分子、シグナル関連分子、タンパク質・膜輸送関連分子、脂質結合タンパク質等の興味深い分子が含まれていた。そこで次年度はこれらの発現機能解析と相互作用する分子の探索を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki, Y., et al.: "Collapsin response mediator protein-2 accelerates axon regeneration of nerve-injured moter neurons of rat"J.Neurochem.. 86. 1042-1050 (2003)
• [文献書誌] Inagaki, N., et al.: "Electrophorese bidimensionnelle haute resolution sur gel extra large pour la proteomique"BIOforun Europe Edition Francaise. 1. 28-29 (2003)
• [文献書誌] Nomura, E., et al.: "Acid-labile surfactant improves in-solution dodecyl sulfate polyacrylamide gel protein digestion for matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometric peptide mapping"J.Mass Spectrometry. 39・2. 202-207 (2004)
• [文献書誌] Inagaki, N., Katsuta, K.: "Large gel two-dimensional electrophoresis : improving recovery of cellular proteome"Curr.Proteomics. 1. 35-39 (2004)
• [文献書誌] 稲垣直之: "ポストシナプス・樹状突起スパインにおけるCaMKIIの空間的シグナリング"生体の科学. 54・2. 90-96 (2003)
• [文献書誌] 勝田和大, 野村英子, 稲垣直之: "Multiple large gel two-dimensional electrophoresis for proteomics"J.Electrophresis. 47. 27-31 (2003)
• [文献書誌] 稲垣直之, 稲垣昌樹: "動くシナプスと神経ネットワーク(塩坂貞夫編)"金芳堂. 103-110 (2003)