神経軸索の伸展阻害分子を標的としたワクチンによる中枢神経再生の試み

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15650059
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 戸田 正博 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20217508)
• 研究分担者: 岡野 栄之 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60160694) ; 河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
• キーワード: 神経再生 / 軸索伸展阻害分子 / 免疫学的アプローチ / ミエリン / Nogo / MAG

研究概要

成熟中枢神経系において、自己複製能及び多分化能を有する神経幹細胞の存在が明らかにされたことから、内在神経幹細胞の分化誘導による中枢神経再生の可能性が示唆されている。また近年、損傷された神経軸索の再生困難な原因の一つとして、ミエリン構成タンパク質であるMAGやNogoなどの分子が軸索伸展を阻害することが明らかにされた。
本研究では、損傷後の中枢神経再生の困難な原因の一つが免疫系から隔絶された環境特異性にあるという仮説の下、損傷部位への軸索阻害分子を標的としたワクチンを作製し、特異抗体あるいは特異的T細胞を介して阻害分子を阻害する新しい免疫学的アプローチによる神経再生を試み、ミエリン関連分子ワクチンによる内在性神経幹細胞及び前駆細胞の解析を目的とする。
(1)軸索伸展の阻害分子Nogoの発現ベクターの作製を行った。特にNogo receptorに結合するエピトープを発現するプラスミドを構築し、発現確認を行っている。
(2)マウス神経損傷モデル(脳、脊髄外傷)を作製した。脊髄損傷は胸髄Th8レベルで脊髄を切断するモデルを作製し、自発運動をSCANET SYSTEM(3次元赤外線モニター)にてモニターすることによる下肢の運動機能評価法を確立した。脳損傷は運動野をCO2を用いたクライオプローブ(-80℃)にて破壊したモデルを作製し、ロタロッド法による運動機能評価法を確立した。
今後は、ワクチン投与後の損傷軸索及び損傷局所における内因性神経幹細胞、前駆細胞の反応を解析する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Toda M: "Immuno-viral therapy as a new approach for the treatment of brain tumors."Drug News & Perspect. 16(4). 223-229 (2003)
• [文献書誌] Ueda R, Iizuka Y, Yoshida K, Kawase T, Kawakami Y, Toda M: "Identification of a human glioma antigen, SOX6, recognized by patients' sera"Oncogene. 23. 1420-1427 (2004)
• [文献書誌] Iizuka Y, Suzuki A, Kawakami Y, Toda M: "Augmentation of antitumor immune responses by multiple intratumoral inoculations of replication-conditional HSV and interleukin-12"J Immunotherapy. 27(2). 92-98 (2004)
• [文献書誌] Toda M, Kawakami Y: "Cancer vaccine and immunotherapy for brain tumors."Curr Pharm Des. (in press).
• [文献書誌] Mikami Y, Okano H, Sakaguchi M, Nakamura M, Shimazaki T, Okano JH, Kawakami Y, Toyama Y, Toda M: "Implantation of dendritic cells in injured adult spinal cord results in activation of endogenous neural stem/progenitor cells leading to de novo neurogenesis, and functional recovery"J Neurosci Res. (in press).
• [文献書誌] 戸田 正博: "腫瘍ワクチン療法"CLINICAL NEUROSCIENCE. 21(5). 543-543 (2003)
• [文献書誌] 戸田 正博: "がん治療のあゆみ"がん集学的治療研究財団. 69 (2003)
• [文献書誌] 三上裕嗣, 戸田正博, 中村雅也, 岡野栄之, 戸山芳昭: "先端医療シリーズ22 整形外科の最新医療"先端医療技術研究所. 431 (2003)