本研究では、成長円錐の右ねじ回転運動・神経突起の右旋回運動という左右非対称な運動特性に関して、1、神経細胞の成長円錐が本当に右ねじ回転運動をするかどうか?、もしこの仮説が正しければ、2、どのように回転するのか?、3、どのようなメヵニズムによって回転するのか?、さらに、4、成長円錐が回転運動し、神経突起が旋回運動することはどういった生物学的意味を持つのか、の4つを具体的な研究項目とする。本年度は、まず成長円錐の培養下での運動をリアルタィム解析し、右ねじ方向に回転運動するのかどうか検証し、仮説が正しければ、回転運動の特性を詳細に理解し、次のステップのための基礎的データを得ることを目的として研究を行った。これまでに運動解析に着手し、CCDカメラを用いてタイムラプス位相差画像を撮影している。上に向かって伸長する成長円錐を撮影すると成長円錐が左向きに動く様子が観察できていたが、位相差では得られた画像の解像度は低く信頼性に欠けるものであった。そこで、本年度は、位相差の代わりに微分干渉観察法を用いてタイムラプス画像を撮影した。その結果、位相差では得られなかった高解像度の画像を得ることができ、成長円錐のフィロポディア一本一本がはっきりと識別できるようになった。そして、成長円錐のフィロポディアが右ねじ方向に回転運動している様子がはっきりと観察できた。さらに新規購入の遺伝子導入装置を用いて、神経細胞を蛍光標識する方法を確立しつつあり、今後詳細な成長円錐の運動を解析することが可能になると考えられる。
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