本研究では、成長円錐の右ねじ回転運動・神経突起の右旋回運動という左右非対称な運動特性に関して、1)神経細胞の成長円錐が本当に右ねじ回転運動をするかどうか?、もしこの仮説が正しければ、2)どのように回転するのか?、3)どのようなメカニズムによって回転するのか?、さらに、4)成長円錐が回転運動し、神経突起が旋回運動することはどういった生物学的意味を持つのか、の4つを具体的な研究項目としている。昨年度までの研究により、成長円錐のフィロポディアが右ねじ方向に回転運動し、右ねじ方向に動くのは成長円錐全体ではなく、個々のフィロポディアであることが明らかとなった。また、細胞骨格として微小管ではなくアクチンフィラメントがこの運動に関与することが明らかとなったが、実際に運動を引き起こすメカニズムは不明である。一般に、アクチン分子はミオシン分子との相互作用により力を発生することが知られていることから、この相互作用が回転運動を生じされている可能性が考えられる。そこで、本年度は、成長円錐内に存在するミオシン分子の機能を阻害することで、ミオシン分子の関与を探った。ミオシン分子ファミリーのうち、神経系で発現することが知られているミオシンVに着目した。アクチンフィラメントとの結合部位を含むヘッドドメインのみを発現するドミナントネガティブ体のcDNAを神経細胞に遺伝子導入したところ、成長円錐の回転運動が阻害されることが観察された。このことより、アクトミオシン系が回転運動に関与することが示唆される。
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