最近、劣性遺伝が示唆される特発性全般てんかん(IGE、中でも特に覚醒時大発作てんかんを中心とする病型)の遺伝子座が8番染色体短腕のセントロメア近傍に位置することが報告された。この領域にはニコチン性アセチルコリン受容体のβ3サブユニット遺伝子が存在し、当初この領域における候補遺伝子と考えられたが既に否定されている。この領域にはヒトμ3B遺伝子も存在しており、研究代表者が樹立・解析しているμ3BKOマウスの表現型が前述の覚醒時大発作てんかんと共通することから、μ3Bがその責任遺伝子である可能性があり、これを遺伝子解析により検討することを目的とした。 ヒトμ3B遺伝子は9つのエキソンからなり、そのORFの長さは86-275塩基対である。そこで、これらの領域をエキソン-イントロン境界領域を含めて増幅するようなプライマー対を設計・合成した。これらのプライマーを用いて、ヒト検体DNA(インフォームドコンセントの元に採取した、研究分担者の兼子が代表を務める「てんかん・熱性けいれんの遺伝子解析グループ」が保有しているてんかん家系の検体ならびに、健常対照群の検体)を鋳型としてPCR反応を行い、得られた増幅産物の塩基配列をダイレクトシーケンスにより両方向から決定した。得られた配列データをもとに、SNPを含む変異の検索を行ったが、現在までに変異は見つかっていない。
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