研究概要 |
初年度は,岩手医大のP3施設において神経親和性ウイルスであるブタコロナウイルス(HEV)を使用し,本ウイルスをトレーサーとして使用する場合の適正な投与量(PFU)を2つの経路で検索した.特に,大脳皮質への投与は神経回路網解析のために行われているトレーサーとしての注入量に準じて行った.このとき,これまで使用されているトレーサーも併用し,感染神経細胞を一次と二次以降に識別しようと試みた.その結果,極少量(0.05μl)の場合,これまでのPFU濃度(1x10^5PFU/ml)では,ウイルス単独での感染は成立しにくいことが判明した.そこで,PFU濃度を10倍,および100倍濃くすると感染が成立すること,また,これまでのPFU濃度でもDEAE-dextranを併用することで感染が成立できる可能性が示された.現在,詳細に解析中である. ●ラットのtibialis anterior筋にHEVを接種し,1日後から1週間後の期間,感染の広がりを検討したところ,極初期に,接種側の脊髄前角でγ運動ニューロンと思われる神経細胞にHEV陽性が確認された.この細胞が骨格筋内の筋紡錘に分布することと考え合わせ,興味ある所見と思われる.(北アメリカ神経科学学会発表済み) ●マウスで年齢・感染経路によるHEVの感染様式の相違を明らかにした. ●P3施設内におけるHEVウイルス(あるいは感染性核酸)細胞内注入装置の設置がはぼ完了し,次年度には実施可能の目処がたった。 ●急速凍結・凍結超薄切法によるシナプス試料観察を行い,新たな染色法の開発を行った.特にシナプスのナノレベルでの組織化学的解析においては大いに有用であると思われる. ●HEVからの感染性核酸の精製は,今のところ成功していない.次年度に持ち越しとなる課題である.
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