研究概要 |
発達期における神経回路の変化、特にシナプス競合過程における神経回路の再編成および神経活動との関連を調べる系を確立するために、まず初年度は聴覚系における発達期における神経回路と神経活動について検討を行った。発達期における神経回路の再編成、とくに聴覚系外側上オリーブ核への入力伝達様式のGABAからグリシンへの発達スイッチングが生後1週目における内耳破壊による発達期の聴覚依存性神経活動入力を遮断すると神経回路の再編成が大きく障害された。また、この再編成メカニズムを検討するために、神経付着急性単離標本を用いて、微小シナプス電流(mIPSC)を調べたところ、発達し従い、GABA作動性のmIPSCの割合の減少、グリシン作動性のmIPSCの増加とともに、GABAとグリシン作動性成分の混在しているmixed mIPSCが移行期には著明になることが判明した。mixed mIPSCのみを抽出すると、その中においてもグリシン作動性の増加とGABA作動性の増加が観察され、single synapseレベルにおける変化であることが示唆された。 さらに免疫染色法を用いると,発達期の外側上オリーブ核においてGADの染色性の減少とグリシン染色性の増加が観察された。また、しばしば移行期には、GADとグリシンの染色が混在した神経終末観察された。Gold particle法を用いた免疫電顕による観察では、グリシン終末内のGABA particleの数が移行期から3週目かけて、激減することが判明した。これらの結果から、台形体核から外側上オリーブ核に入力する抑制性伝達伝達物質は未熟期にGABAから成熟期のグリシンへ単一神経終末内でスイッチすることが判明した。
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