研究概要 |
血管内皮細胞は細胞基質と面ではなく点で接触していることが知られている.これを焦点接触という.焦点接触は細胞骨格成分の一つであるアクチンフィラメントの末端部に多く見られ細胞底面に数多く点在していることから,内皮細胞は焦点接触により形態を維持していると考えられる.したがって,力学刺激に対する内皮細胞の応答機構を知るためには焦点接触力を計測することは非常に重要である.本研究では,シリコンの微細加工技術を用いて微小な力センサを開発し内皮細胞の焦点接触力を測定することを目的とする.研究初年度である今年度は,ピエゾ抵抗を有するカンチレバー型のマイクロセンサアレイの開発を目指した.シリコンにボロンをイオン注入することによりピエゾ抵抗を作り,ウェットエッチングによりセンサを自立させた.その後,電極および配線となるアルミニウムを蒸着した.センサ出力信号を取り出すためホイートストーン回路を形成した.センサの性能を評価するため細胞の接触力を模擬してマイクロピペットによる微小ひずみ負荷実験を行ったが,得られたセンサ出力信号にはノイズが大きく含まれており,現状では十分な力分解能が得られていない.ボロンイオンの注入加速度など条件設定が非常に困難であった.そこで現在はセンサ方式を変更することを検討している.シリコン表面をエッチングしてマイクロポストを製作し,このマイクロポストのたわみを計測することにより接触力を計測する方法である.この場合,配線が不要であるので小さなデザインを作製することができより微小領域の計測が可能である.
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