研究課題
腫瘍組織の電気特性が早期から正常組織とは異なる事実を最大限に利用し、早期の小さな乳ガンも高い位置精度で画像化する手法を開発するのが本研究の目的である。このため、直交する二方向からのチャープパルスマイクロ波照射によりCT画像とレーダ画像を取得して両者を統合した早期乳ガンの統合イメージング手法を開発するのが本研究の目標である。昨年に続き、高分解能型CP-MCTの原理を応用した乳房計測用レーダによりCT撮像面内の電気特性分布をイメージングする手法について検討した。昨年度の解析では皮膚表面より深い部分からの反射波だけを取り出すことができれば数値上の分解能よりかなり小さな腫瘍もその反射量変化から存在と中心位置が同定できることを示した。しかし、昨年の解析ではもっとも大きな表面散乱波、つまり皮膚からの散乱波を排除する手法については考慮しておらず、具体的な計測の可能性を示し得ていなかった。本年度はチャープパルスマイクロ波CTと全く同じ原理を利用したチャープパルスレーダでの皮膚散乱波を排除する方法について検討を行った。送受信アンテナを乳房全面に配置し、一方からマイクロ波チャープパルスを送信、他方のアンテナで反射波を受信する。入出力信号のビート信号は経路の長さに応じた周波数となるため、一定周波数以上の周波数成分だけを取り出す、つまり高域通過フィルタを用いることにより、表皮の皮膚組織が引き起こす最大の散乱波の影響を軽減し、乳房内部からの反射信号を取り出すことが可能となることを数値シミュレーションにより示した。本年の解析では最適フィルタ設計まで進めることはできなかったが、反射信号の中から直径20ミリ程度の小さな腫瘍による散乱信号も受信アンテナで捕えられること、つまり現実の信号計測可能性を示すことができた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
Proc.of 26th IEEE Annual Int.Conference of the IEEE EMBS, San Francisco
ページ: 1427-1430